第4章 Ever green③
「なにわかりやすくいじけてんだよ!決勝戦、レッド達も観客も全員びびらせてやろうぜ!」
半眼でニーっと歯を見せるその笑顔は、まるで悪戯っ子な子供のよう。
「う、うん」
すると今度は、俯く私を子供をあやすような仕草で覗き込む。
「お前の実力はオレが誰よりも1番よく分かっている。オレと周りのやつら、お前はどっちを信じるんだ?」
「それは…」
突然、問いの答えを待たずにグリーンが私の手を掴んだ。そのまま手を上げ、無理やり私も手を振らされる。
「ちょっと!?グリーン!」
「しっかりしろ!お前の晴れ舞台だろ!」
いじけていた私の気持ちを振り払うように、グリーンは結んだ手を高らかに観客席へと向ける。
人前で手を繋ぐ気恥ずかしさはあったものの、グリーンが私を勇気づけてくれているのが分かって、前を向いて歩みを再開した。
4つの試練で頭と身体を酷使し、休む間もなくトーナメント戦へ。気力も体力ももう残っていないはずなのに、なぜだろう?なぜこんなにもグリーンが隣にいるだけで——
「なんかワクワクしてきた!」
「だろ?楽しもうぜ!」
この大会を通して、改めてグリーンのいろんな一面を知ることができた。
自信がなくおくびょうな私だったけど、グリーンと共に過ごした時間が、大切な思い出のひとつひとつが、私をこうして決勝戦にまで連れてきてくれたんだ。
「グリーン」
「どうした?」
「ありがとう。グリーンと一緒に大会出られて本当によかった」
「っな、なんだよ急に!」
繋がっていた手がパッと離される。
グリーンの顔が赤い。珍しく照れている。
「……礼なら優勝した後でたっぷり聞いてやる」
ぶっきらぼうな口調に思わず笑みが溢れた。
そうだよね。今、私の隣にはグリーンがいる。
周りの言葉なんて気にしちゃだめだ。
私とグリーンが、対戦者が待つコロシアム中央に辿り着くと、会場の歓声が地面を揺らす。
緊張で胸がピリピリと痛い。
張り詰めた空気の中、決勝の相手と互いに視線を交えた。