第4章 Ever green③
「赤青緑に⚪︎と×。な?楽勝だろ」
「楽勝って言われても…」
ぼんやりとタイルを眺める。
赤青緑。この3色の組み合わせと⚪︎と×の関連性は…?
赤、緑、青、緑、青、青、緑、赤……
繰り返し色を変え光を放つタイルを見つめていると、催眠術にかかったようにぼーっとしてきた。
ぼんやりとした意識の中、不意に幼い記憶が呼び戻される——あれはそう、たしか、3人がオーキド博士に呼び出されて初めてポケモンをもらった時……
「もーくやしいー!」
「よっしゃー!次はレッドの相手してやるよ!」
舞台はマサラタウンの草原。
レッドは頷き、ヒトカゲをモンスターボールから出してバトルを開始した。
記憶の中、幼い私は3人のポケモン勝負を、瞳を爛々と輝かせて観戦している。
リーフちゃんがそんな私の隣に腰掛ける。膝の上にはフシギダネ。
「グリーンってば、休ませてあげればいいのに」
「でもゼニガメもたのしそう」
「そうね。かわいい顔して、グリーンににてまけずぎらいなのかも!」
リーフちゃんは、グリーンにこっそりあっかんべーをした。当然本人は、勝負に夢中になっているので気づいていない。
「でもリーフちゃんおしかったね」
リーフちゃんは手当てを終えたフシギダネの頭を愛おしそうに撫でた。
「この子まだくさタイプのわざ覚えてないの。ちゃんと覚えればグリーンにかてるのになぁ」
「くさタイプ?わざ?」
「うん。ポケモンにはあいしょうがあってね、くさタイプはみずにつよいんだよ。そのかわり、ほのおはあいしょうがわるいけど」
「ジャンケンみたい!」
「ほんとにね」
リーフちゃんは口元に手を添えてクスクスと笑った。
柔らかな情景の中、はしゃぎ合う幼馴染達。
3人がマサラタウンから旅立つ直前の出来事だからよく覚えている。
今でも思い出すとちょっぴりさびしくなる、懐かしくも愛しい記憶に少しだけ顔が綻んだ。