第4章 Ever green③
「すごい!ジムの仕掛けみたい!」
目をキラキラさせる私とは対照的に、グリーンは冷静な表情で考え込んでいる。
「グリーン!タイミングよくいっせーので渡ろう!」
「いっせーのつったってよ、闇雲に進んでハズレたらどうすんだよ」
「そしたらやり直せば大丈夫だって」
だけど、根拠のない大丈夫はすぐに否定されてしまう。
「ダメだ。こういう時こそ冷静にならねーと」
グリーンは呆れたようにため息をついた。
「でも、早くしないと人が来ちゃうよ。間違えたらまたパターンを覚えてやり直せばいいし」
と言ったタイミングで、重なった双子の声が忠告を告げる。
「「ハズレたら足場が消えて失格だから気をつけてね!!」」
「だ、そうだ」
「オレの言う通りだったろ?」とでも言いたげに、腰に手をあてて得意げな顔をしている。
ある言葉を私は聞き逃さなかった。
「ちょっと待って。足場が消えるって?」
タイルに近づいて確認しようとすると、すぐ手前で地面が途切れているのに気づき、慌てて後退する。
しゃがんで目を凝らせば、光るタイルの下は底が見えない切り立った崖になっていた。
落ちたら奈落まで真っ逆さま。
背筋が一瞬で凍りついた。
「へっ、こりゃあさっきよりもスリル満点だな。よかったじゃねーか。結果的にあれが準備運動になって」
落ちて内臓が浮く感覚を思い出しただけで身震いする。
「そんな…また怖い思いを…」
「しかも今回はオレにくっつけない」
グリーンの含みのある笑みを松明の明かりが逆光となって照らし出すと、意地悪&不気味さ倍増で、まるで悪の大魔王みたいだ。
ニヤつく大魔王を前にギョッとして固まる。
「なんでそんな嬉しそうなの?」
グリーンは即答する。
「ナナを困らせるのが楽しいからに決まってんだろ」
「変態だ!」
「誰が変態だよ!」
「変態の趣味に私を巻き込まないで!」
「趣味じゃねえ!予選だ!」