第7章 第7章 休養中編
俺は薄情な人間だったんだ。
俺を愛してくれた人間さえ、なんの感情も
湧かない、枯れた人間だ。
焰「これでは━━、俺は鬼と一緒だな…。」
与えられた羽織を握り締めて、そう呟いた。
蒼治郎さんの葬式を行い、挨拶に来る
全ての人間に面倒になりながらも対応する。
その時、蒼治郎さんの幼馴染・煉獄愼寿郎殿とは
話さなかった。
彼もまた、妻を失ったばかりで
心身共に疲労していたのだろう。
泣き腫らしたような跡を残しながら彼は
線香をあげ、息子達と共に帰って行ったのを
横目で見送った。
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焰「……泣けなかった俺は、やはり異常だな。」
久しぶりに昔の夢を見た。
弱く、蒼治郎さんの変化も見抜けなかった
俺の唯一の後悔している過去。
誰にも言えない俺の許されない過去。
痛みの引かない体を起こし、立ち上がる。
まだ外は太陽が出ていない…。
朝日が登るにはもう少し時間があるだろう…。
焰「…。(フラリ」
ただ、行く宛のないまま…蝶屋敷の中を
歩き出した。
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ヒタリ…、足を止めたのは縁側。
空が白み始めている。もうすぐ、朝日が登る。
焰「(……俺の嫌いな朝日が登る…。)」
ふと思った。
この朝日に当たれば、俺は鬼と同じように
灰となって死ねるのでは、と。
散々、鬼だとか、化け物だとか言われ続けて
来たんだ。案外本当に灰になって死ねそうだ。
ジャリ…
素足で庭へ降りる。
春といえど、まだ朝は肌寒さが勝る。
焰「……羽織を置いてきてしまったな…。
でも…いいか、別に。」
本当に灰になってしまったら、
大切な羽織が汚れてしまう…。
空が更に明るくなってきた。
そろそろ、太陽が姿を現す頃だ…。