第6章 無限列車編後
<槇寿郎side>
廊下から千寿郎の声が聞こえた。
千寿郎「父上、お手紙と言伝を頂いております。
お読みになられますか?」
槇寿郎「…………誰からだ。」
次の瞬間、俺はその手紙と言伝の送り主の名前を聞いて
思わず酒瓶を畳に落としてしまった。
千寿郎「父上の幼馴染である、篝蒼治郎様の弟子の
火神焰様と名乗られておりました。」
槇寿郎「……火神焰だと!?」
千寿郎は俺の突然の大声に驚いたようで
声がしなくなった。
槇寿郎「今更、何の用だというのだ!
手紙なぞ見ぬ!燃やせ!」
千寿郎「し、しかし父上……っ。焰様は((槇寿郎「うるさい!
見んと言ったら見ん!」……っ。」
俺は落とした酒瓶を拾い、酒を流し込む。
チリチリと喉の焼けるような感覚が通り過ぎていく。
千寿郎「……では、言伝だけ。
【花を、ありがとうございました。】と。」
「失礼しました。」と去っていく千寿郎の足音。
俺はその言伝を聞き、ただ固まっていた。
槇寿郎「(俺だという確信があったのか。
だが、あいつが墓参りへ行っている姿など
見た事などない……。)」
それに、礼を言われる事ではない筈だ。
あいつが礼など……、あんな人形のよう、な……。
槇寿郎「(……成長するのだ、あいつも。人なのだから。
変わる事もまた、有り得ん事ではない。)」
俺は酒瓶を置き、立ち上がる。
千寿郎は手紙を燃やさず保管する筈。
場所なら分かるから、そこから取って内容を確認しよう。