第8章 遊郭編
<炭治郎side>
ぐにゃ
炭治郎「(柔らかいんだ。柔らかすぎて斬れない。
しなって斬撃を緩やかにされた。)」
ギュルッ!
ババッ
無数の帯が俺を囲むようにして飛んでくる。
炭治郎「(帯が増えた…。十三本。
避けるとまた被害が広がるかもしれない。)」
でも、何だろう?
炭治郎「(凄く遅いな。)」
ギャギャギャ!
堕姫「斬らせないから今度は!!
さっきアタシの頚に触れたのは偶然よ!!」
ギャギャギャ ギャッ!
堕姫「!?」
全部の帯を一ヶ所に集めて、
刀で固定する。
堕姫「それで止めたつもり!?
弾き飛ばしてやる!!」
グンッ!
ビンッ!
帯が真っ直ぐ、弛みのない状態になる。
でも、このままじゃ頚を斬れない。
なら───
ギュルンッ!
本体に戻る前に、細かく切り刻んで
そのままの勢いで頚を斬るだけだ。
単純な事だ。しなるよりも尚
早く刀を振り抜いて斬ればいい。
炭治郎「(今度はいける。斬れる。)」
後もう少し………。
? 視界の中に、誰か…。
花子『お兄ちゃん息をして!!お願い!!』
炭治郎「ゴホッ!!」
<NOside>
人間には二つの世界がある。
ドッ
炭治郎「ゲホッゲホッ!ゲホッ グッ…ゴホッ!カハッ!」
『体力の限界』を迎えると
人は苦しくて動けなくなる。
目から血を流すほどの強い怒りで
苦しみや痛みを忘れ、動けたとしても──
次に来るのは『命の限界』。
当然ながらこれを超えると人は死ぬ。
炭治郎はそれを超えかけた。
この限界値を一秒でも伸ばし、
鬼と渡り合うために人は
幾星霜幾星霜、血反吐を吐くような
努力をしているのだ。
怒りという感情だけで勝てるのならば
もうこの世に鬼は存在していないだろう。