第8章 遊郭編
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槇寿郎『竃門君、君には悪いことをした。
杏寿郎の為に泣いてくれてありがとう。
この四ヶ月、千寿郎とも手紙のやり取りを
してくれていたそうだね。
初対面があのようなことになってしまい、
恥ずかしく思う。
自分の無能に打ちのめされていた時
畳み掛けるように最愛の妻が病死した。
それから酒に溺れ、蹲り続けた
私は、とんでもない大馬鹿者だ。
杏寿郎は私などと違い、素晴らしい息子だ。
私が教えることを放棄した後でも
炎の呼吸の“指南書”を読み込んで
鍛錬し、柱になった。
たった三巻しかない本で。』
槇寿郎『瑠火の…母親の血が濃いのだろう。
杏寿郎も千寿郎も立派な子だ。
そして、竃門君。君にはもっと凄い力がある。
日の呼吸の、選ばれた使い手は
君のように生まれつき赤い痣が額にあるそうだ。
だからきっと君は──────』
炭治郎「(いいえ、槇寿郎さん。
この傷は生まれつきのものじゃない。)」
«これは元々弟が火鉢を倒した時、
庇って出来た火傷です。
更にその上を“最終選別”で負傷して
今の形になりました。»
«俺の父は生まれつき額に薄く
痣があったようですが、俺は違います。
俺はきっと、選ばれた使い手では
無いのでしょう。»
ドクン ドクン
炭治郎「(でも、それでも……
選ばれた者でなくとも、力が足りずとも……)」
ドクンッ ドクンッ
炭治郎「(人にはどうしても
引けない時が、あります。)」
ミシィッ
炭治郎は血の涙を流す。
その瞳は、真っ直ぐに鬼に向いている。
炭治郎「(人の心を持たない者が、
この世には存在するからです。
理不尽に命を奪い、反省もせず悔やむこともない。
その横暴を────)」
ぐん
堕姫が体勢を崩す。
何故なら…
炭治郎「(俺は絶対許さない。)」
ドン
炭治郎が、堕姫の足を掴んでいたからだ。