第8章 遊郭編
目が良い宇髄はすぐにその人混みがなんなのかを
察する。
シャリン シャリン
宇髄「『ときと屋』の“鯉夏花魁”だ。」
シャリン
宇髄「一番位の高い遊女が客を迎えに行ってんだよ。
それにしても派手だぜ。いくらかかってんだ。」
感心しながら宇髄がそう言っていると
何を勘違いしたのか善逸が大声で宇髄に近付く。
善逸「嫁!?もしや嫁ですか!?」
宇髄「近い!!」
善逸「あの美女が嫁なの!?
あんまりだよ!!三人ともいるの
皆あんな美女すか!!」
あまりのうるささと近さにキレた宇髄は
善逸を殴る。
宇髄「嫁じゃねぇよ!!こういう“番付”に
名前が載るから分かるんだよ!!」
そんな中、伊之助は二人を見ることもなく
花魁道中の歩きの遅さに耳をほじっていた。
伊之助「歩くの遅っ。山の中にいたらすぐ殺されるぞ。」
そんな伊之助を血走った目で見ている女性。
すると何かを確信したのか、宇髄に声をかけた。
荻本屋「ちょいと旦那。この子うちで
引き取らせて貰うよ。いいかい?
『荻本屋』の遣手…アタシの目に狂いはないのさ。」
宇髄はパッとにこやかに両手を合わせる。
宇髄「“荻本屋”さん!そりゃあありがたい!」
伊之助は何も分かってないようだったが
うまく潜入先に入り込めた。
宇髄「達者でな猪子─────。」
荻本屋の女性に連れられ、人込みへと消えていく。
そうして、二人の間には沈黙が流れる。
宇髄「……。」
善逸「……。」
そして、善逸は気付く。
善逸「(やだ、アタイだけ余ってる!!)」