もしも蒼月潮が大人しめの女の子だったら……【うしおととら】
第1章 どうしてこんなことに……
「ご、ごめんなさい部活が忙しくて……」
「そ、そうかぁ…」
そんな悲しそうな顔しないでくれ、こっちだって断るのすごく心苦しいんだよ。
「まあ、練習試合の度に来てくれてるからな…そんな毎回呼んじゃ悪いか」
「ごめんね…」
「いや、いいよいいよ!でも気が向いたらいつでも声かけてな!」
昨日解放しちゃったオバケがなにしでかすか分からないから、せめてこのオバケが嫌いな槍を持ってる私が見張ってないといけないんだ。
あー、上を向かずともオバケがすごくニヤニヤしているのが分かる。こいつにとって人間は食べ物にしか見えていないんだろうしなあ。
「うーしおっ」
「うわっ」
急に後ろから声をかけられてビクッと飛び上がる。慌てて振り向くとそこには、校内大好評娘の二人が立っていた。
「…あ、中村さん、井上さんおはよう」
「おはよー、何かあった?今日ちょっと元気なさそうよ」
井上さん、もしかしてエスパーだったりするのかな…
「あ~、大丈夫。少し夜更かししただけだから」
「本当?」
「うん…」
小学校が同じだっただけなのに、こんなに私に良くしてくれるなんて。二人ともやっぱり優しいなぁ。綺麗だし愛想もいいし、モテるわけだ。
「ふーん…じゃ、私達今日は先生に頼まれたことがあるから先に行くけど。何かあったら私達に相談してよ?」
「夜更かしもほどほどにね~」
「うんっ、ありがとう」
走っていく二人の背中を眺めながら、教室に向かって歩いていく。道中、オバケはこんなことを言い出した。
「あの女二人、ずいぶんうまそうな匂いをさせてたなぁ」
「えっ…」
クックッとオバケが喉を鳴らす。少し上を向くと、二人が向かった先を見つめて、ニヤァと口の端を吊り上げているのが目に入った。恐ろしくなって、思わず頭を下げた。冷や汗が頬を滑り落ちていく。
「た、食べないでよ、あの二人は」
「ああ?わしが何を食おうがわしの勝手だろうが」
グイッと髪を引っ張られ、無理やり上を向かされる。
「もっとも、先にうぬを食らってからだがなぁ」
あと少しで肌から落ちてしまいそうだった冷や汗を、ベロリと舐めとられた。