もしも蒼月潮が大人しめの女の子だったら……【うしおととら】
第1章 どうしてこんなことに……
私の名前は蒼月潮。少し、いや、かなり気弱な中学二年生だ。苦手なものは虫やヘビみたいなにょろにょろ動くもの。ゴキブリ退治なんて生まれてこのかたやったことはない。あと、信じてなかったけど、オバケも苦手。
今日は平日なため、私は学校へと歩を進めた。いつもなら学校へ行くのなんて全く苦ではないのだが、今日だけは、体が重く感じた。原因としては、この薄汚い槍を持っていること以外にもう一つ。
「な、なにも学校までついてこなくても……」
「あぁ?何回言えば分かるかねぇ。わしはお前にとりついてるんだ。その忌々しい槍を3尺でも身から離してみろ。
たちまち飛び付き引き裂いて、骨までしゃぶりつくしてやる…!!」
「ひぃぃ…こわい…なんで私……」
この、私の肩で睨みを利かせているオバケは、500年もの間家の寺の蔵に張り付けられていた妖怪なのだという。ちいさいころから父さんに言い聞かされてきた妖怪退治の名人の槍。それに繋ぎ止められていたらしい。
……事情があって、私がそれを引き抜いてしまったのだが……その出来事があったのが昨日のことだった。
暫く歩くと、私が通っている中学校の校門が見えてくる。登校時間のため、たくさんの生徒がいて、賑やかだ。と、頭上のオバケが目をギラギラと光らせているのを見て、私は小さくため息をついた。
「おーい、蒼月さーん!」
「あ、クラスメートの……」
同じクラスの男子が二人、名前は……なんだったか、まあいいか。
「ん?それなんだ、蒼月さん、変なもんもってくっと先生に没収されるぞー」
「えっと、父さんが今留守で…持っててくれって頼まれたの」
「ふーん、まあ蒼月さんのオヤジさんが変わってるってのは先生たちの間でも有名だからな~」
父さん…でも娘一人だけ家に置いていくような人だしなぁ。仕方ないか。
「ウソつけ」
オバケの声がかかる。
「うっ、嘘じゃないよ?」
「え?うんそうだな?」
と、何か用事があったから私に声をかけたのだろう。用事を聞かなくちゃ。
「あ、そうだそうだ!今度試合なんだ!練習だけでいいからまた部活来てくれよ!三年抜けてきついんだ」
「あー……」
実は私、こういう申し出は少なくない。気は弱いが、運動神経は抜群ということで、女子だけでなく男子からもお誘いが来ることがあるのだ。