もしも蒼月潮が大人しめの女の子だったら……【うしおととら】
第2章 もとはといえば
私は階段を降り、オバケの前に立つ。やっぱり、近くでみるほど、怖い。何してるんだ、こんな狂暴そうなやつを、私は、この世に出そうとしているのか。でも、ここで槍を抜かなきゃ……麻子たちが…!
「ふん、分かったみてえじゃねえか」
「……やっつけて、くれるの?」
「約束は守るさ」
槍に手をかけ、思い切り引っ張った。思ったよりも深く刺さっており、抜くのにはかなりの力がいるかと思ったが、何故か、それほど苦ではなかった。
ズッ…!
「グッ……」
槍が抜けた、その瞬間。今まで聞いたことのない、耳鳴りを聞いた気がした。
ドッ!!
「がっ…!?」
いきなり、首を掴みあげられたことに気づく。槍を抜いた直後、オバケに襲いかかられたのだ。私は槍を持っていない方の手で、私の首を締め上げている腕から抜けようともがいていた。長い爪で首に傷が入り、つーっと血が流れ落ちる。
「はあ……よくも、わしを、コケにしてくれたなあ!」
「ゲホッ…約束は、どうしたの…麻子たちは…!」
「誰が人間との約束なんざ守るんだよ!ケケケッ」
「なっ……」
更に強く締め上げられ、腕の力が抜けていく。視界が霞む。息がうまくできなくて、体に力が入らない。
……動けない。
「おい、女!お前を食ったらその後は向こうの二人だ!せいぜいあの世で後悔しとくんだな!」
________________________________________________
キィイイイイ……
「…今、なんて言った?」
「ああ?……………あぁッ…!!」
周りの空気がざわざわと騒ぎだし、女を中心に空気が吸い込まれていく。わずかに槍についていたわしの血液までもが、飲み込まれていくのが見えた。
………槍が鳴っている!!
し、しまった…こいつまだ槍を持ったままだったんだ!!
「きたねえぞ……きさまァ…!!」
ということは、あの時と…あのサムライが、わしをここにぬいつけた時と、同じだああ……!!
「うわあああああぁ……!!」
一気に目の前の女……いや、獣が恐ろしくなり、急いで地上に飛び上がった。後ろからやつも、来ている…!地上には虫や魚がうじゃうじゃとはびこっており、とてもじゃないがまともに進めない。
「どけええい!!」