もしも蒼月潮が大人しめの女の子だったら……【うしおととら】
第2章 もとはといえば
オバケからできるだけ離れて、壁伝いに地上への階段へ向かう。すると、慌てた様子で向こうは私を止めようと話しかけてきた。
「あー!!まてまてまて!!」
階段を登る足を止め、そちらへ目を向ける。私としては、さっさとここから出ていきたいところだけど、やっぱりこのオバケのことが気になる。父さんの話の通りだと少なくとも500年くらいはここに閉じ込められていたようだし、可哀想だという気持ちもあった。
「どうだ!こうしよう。お前がこの槍を抜いてくれたら、なんでも言うことを聞いてやる。わしも人間に恐れられた化け物よ、約束はまもる!」
なんでも………
「……それで、自由になったら…どうするの」
「そりゃあまずお前を食らって…あ!おっ、おい!!」
「ちょっと可哀想だなって思った私がバカでしたよ!」
階段を登りきり、近くにあった木の板を入り口に乗せていく。オバケは何か言っているが、おかまいなしだ。怖いし、あんなのが野放しになると思うと私の身がもたない。どうか、もう500年ほど大人しくしていただこうと思う。
「なんでもしてやるぞ!!気に入らんやつでもなんでも殺してやるからー!!」
「あんたが自殺しろ!!」
ドスッ!!
最後の荷物を置き、地下への入り口を完全に閉めた。これで、"あれ"はまた暗い地下室に閉じ込められたことになった。
はあ、と乱れていた息を整え、ムシぼしするはずだった本を持って外へ出る。
「………?なんで私、こんな強気に話せたんだろ」
まあ、いっか。
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「うしおー!いるー?」
「はう~、うしおちゃん」
「…あ、中村さん、井上さん。いらっしゃい」
蔵のオバケのせいで忘れかけていたが、今日は二人の友達と私の家で勉強会をする予定だったのだ。もうすぐ科学の試験があるので、勉強が苦手な私は、この二人にテストの度泣きついていた。
「ん、うしおあんた、頭に埃ついてるわよ。とったげる」
「え!あ、本当?今日は朝から古本のムシぼししてたから……」
中村さんが手を伸ばした。
その時だった。
「とれたよ、うしお。………うしお?」
「うそ…」
玄関の向こうで、うじゃうじゃと魚のような、虫のような生き物が、空中を泳いでいたのだ。