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【銀の匙】大人と子供【駒場】

第1章 大人と子供【完結】


 翌日、縁側で洗濯物を畳んでいると一郎くんがやってきた。
「お疲れ様、休憩?」
「はい」
「ちょっと待ってて、お茶持ってくる」
 返事を待たずに台所に行くと、湯呑を一つ持ってきて側に置いてあった急須でお茶をいれてある。
「どうぞ」
「ありがとうございます」

 作業着で縁側に座りお茶を啜る姿は大人と変わらないけど、よく見ると確かに若いんだよね。
「さんは、農作業しないんですね?」
 二杯目のお茶を注いでると、ボソリと呟かれた。
「え、あぁ、うん。私は小さいころから一切作業には手伝わせてもらえなかったんだ。どうせお前は出て行くんだからやる必要ないって。その代り家事は全部私がしてたよ」
 期待されてないって感じの言い方で私だけ仲間外れみたいで昔は嫌だったけど、今思えばあれは実家が農家だからとか考えずに好きにしていいんだよって意味だったんだろうな。

「ほら、忙しい時期に私が家事をすれば母さんがその分作業できるでし、だからゴールデンウィークとかも帰れそうな時は帰ってるんだ。うちはそういう形態でやるって父さんの代から決めたらしいんだよね」
「そうですか」
 二杯目に手を付けずに黙ってしまった一郎くん。なんだか無言が重いな、何か話さないと。

「一郎くんの家も酪農家だったんだよね、どんな感じだったの」
「うちは事業を拡大した直後に親父が死んで、お袋が一人で頑張ってたんスけど小さい妹もいるし首が回らなくなって、今は俺が借金返すために働いてます」
 そうだった。昨日も聞いてたのに何で聞いちゃったんだろう。私の大馬鹿者!
「そ、そうなんだ」
 そしてまた無言。どうしよう、共通点なんて無いし私は農作業とかほとんど知らないしなぁ。

「私さ、あんまりわからないけど、頑張ってね」
「……俺、充分頑張ってるつもりです。足りてないですか?」
 ヤバ、余計な事言って怒らせちゃったかな。
「ごめん、なさい」
 睨まれてるだろう視線を感じて顔を上げることができない。
 そうだよね、一郎くんは学校止めて家族の為に頑張ってる。なのに頑張れなんて言われたら今までの頑張りが認められてないみたいだ。
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