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【銀の匙】大人と子供【駒場】

第1章 大人と子供【完結】


「私、全然わかってないで勝手な事言って、本当にごめんなさい」
 膝の上で折りたたんだタオルをギュッと掴む。私の方が年上なのに甘いこと言って、一郎くんの方がよっぽど大人だ。

「すいません。俺もちょっと言い過ぎました。さんの飯美味かったです。元々美味い素材をもっと美味くなるように料理してて、別にさんが農作業してないの駄目だなんて思ってません」
 ほら、また気を使ってくれてる。本当に駄目だな。
「……」
 何か言わなきゃと思うのに言葉が出てこない。
「……泣かないでください。俺が親父さんに殺されます」
「な、泣いてないよ!」
 きつく握った拳に手を乗せられて驚いて顔を上げるとニッと笑う一郎くんの顔。
「引っかかった」
「え?」

「一郎~、そろそろ作業再開するぞ」
「はい! じゃあ、行ってきます」
 すぐに真顔に戻って行っちゃったけど、今、笑ってた? 一瞬だけど一郎くんの素顔を見ることが出来た気がした。

 まだ15歳の駒場一郎くんの笑顔。
「あんな風に笑うんだ……」
 きっと学校にいる間はあんな風に友達と笑いあってたんだろうな。
「ヤバい、顔熱いかも」
 年下なのに、無理して大人であろうとする所が痛々しいと思ったけど笑うと案外可愛いとか、昨日あったばかりなのに翻弄されてる。

「~これも洗濯頼む。どうした? 顔が赤いけど熱でもあるのか?」
「な、何でもないよ! これ洗濯だね、わかった」
 やってきたお兄ちゃんがわかるはずもないのだけど、慌てて追い返した。
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