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貴方と未来を過ごしたい

第4章 ある日のハートの海賊団




どうやら、トラウマの中に料理も入っているらしい。一体何があったんだよ…。 みのりを探して船の中を彷徨いていると、ふと何処からか声らしき物が聞こえる。その出処へと近付くと、どうやら みのりは倉庫の隅に蹲っていたようだ。


「あぁ…どうしよう…やっぱり…うぅん、でも…」


ブツブツと独り言を言っている みのりはこちらに気付いていないようだった。手っ取り早くそのまま独り言で悩みを吐露してくれないかと様子見する事にした。


「あ〜…いや、うん。そうしよう!」


何かを決めたようで、 みのりが立ち上がる。そして倉庫の入口を向いた瞬間俺と目が合った。


「あ…ロー…」


気まずそうにそっと視線を下に逸らす みのり。どう声を掛けてやろうかと悩んでいると、先に覚悟を決めた みのりが顔を上げ俺をしっかりと見る。


「私!初めて作った料理!誰にも食べて貰えず、捨てられたの…!」


少し泣きそうな顔に見える気もする。見ようと思えば真顔にも見える。


「それから、1度も作った事ない…怖くて…1人暮し始めてから、作ろうとした事はあるんだけど…駄目だった…。どんだけ料理頑張っても、食べるのは私だけなんだよねって思ったら…包丁握れなかったんだ」


そして、やっと変わった表情は悔しそうな顔だった。あぁ…こいつは泣く事も出来なくなってるんだな。


「仕方ねぇな…せめてシャチに教わりながら作ってくれよ」
「え?」
「多少不味くても全部食ってやる。だから、大丈夫だ」


そう言うと、珍しい みのりの笑顔。これからどんどん増やしてやろう。悲しい顔も悔しい顔も、出来ないぐらい楽しくしてやろう。


しかし、後日 みのりの料理を食べた俺は後悔した。


「おい みのり、何で俺が教えたのにこんな事になるんだよ!」
「ちゃんと言われた通りに作ったよ!?」
「俺が一瞬目を離しただけで何で紫色の液体になるんだよ!どんな錬金術だ!」
「キャプテン!死なないでぇ!」
「紫色の液体を飲み干すなんて…キャプテン、俺あんたの勇姿を忘れないよ…!」
「ふざけてないで早く吐かせるんだ!」


二度と料理をするなと言うと、 みのりは昔捨てられた原因これだったかもしれないと呟いた。捨てた奴…賢明な判断だ…。



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