第5章 冷たい水 (深海奏汰)
「ぷか、ぷか……♪」
雪がふわふわと舞い落ちるこの真冬に噴水で水浴びをしている人を見つけて私はその場で呆然と立ち尽くした。
『この…寒空に何をやってるんですか!?』
慌てて噴水から引っ張り上げると彼はぷぅっと頬を膨らませる。
「むぅ……アリスさん、『じゃま』しちゃいやです」
ばしゃばしゃに濡れた制服の裾を絞ると手が冷たく赤くなっていく。
『身体…っ、こんなに冷えてるじゃないですか!』
彼の身体を掴んだ時、冷え切っているのがわかった。
いったい何分、何十分ここでこうしていたのだろうか。
「もっと、ぷか、ぷか……♪したい」
『わー!!!??だめですだめー!!!』
再び噴水の中へと戻ろうとした彼を私は声を上げて引き留める。
流石は奇人の一人。深海奏汰。
おっとりしていてマイペースな人だが掴みどころがない。
学院内の噴水で制服のまま水浴びをしたりと奇行が目立つためよく教師から睨まれているが今は冬休みのため学院にはほとんどの先生がいなかった。