第11章 自分勝手な王様 (月永レオ)
「うぉ!?び・・・びっくりした~あぁ・・・今の声で妄想が・・・う~・・・なんだよアリス」
『い・ず・みさんがレオさんを呼んでます!大至急向かって下さい!』
眉を寄せながら顔を近づけ彼に伝言を伝えるとレオさんは頬を膨らませた。
「・・・・・・え~・・・やだ!」
『や・・・!やだってなんですか!?』
窓から差し込む夕焼けが時間の経過を告げる。
早く泉さんの元へ行ってもらわないと私が被害を受ける。
あの泉さんの冷えた眼差しと毒舌口調を思い出すだけで嫌な気分になってしまうからだ。
「ん~、嫌なもんは嫌なんだよ」
『困りますっ!』
涙目で反論するとレオさんは面白そうにきゃきゃと笑い出した。
「いいじゃん泉の頼まれごとなんて!無視しても☆」
『嫌ですよ!?怖いじゃないですか!?』
泉さんは素直で無く口が悪い。
態度が大きく自信満々で飄々としていて・・・
「苦手なんだよな?」
『・・・・・っ!』
レオさんのライトグリーンの瞳に射抜かれた気がした。
「だからさ!たまにはあいつを困らせてやろうぜ~!お前、最近あいつのパシリみたいになってるからさぁ~」
彼は人をよく見ている。
いや、見過ぎているのだ。だから―――
私の手を引き胸元へ引き寄せる。
ぽんぽんと頭を撫でながら彼は耳元で囁いた。まるで小さな子供をあやす様に。
『・・・っ』
「おれは天才だからなんでも分かるんだな~☆」
ケタケタと笑う彼は本当に自由気ままで自分勝手な王様だ。
「で?あんたは人の頼み事もまともに聞けないわけ?」
『~~~っ、ご、ごめんなさ・・・』
「あんまりにも帰りが遅いから教室を覗いたらリーダーとイチャついてるしさ、ほんとムカつく。俺だってあんな風にゆうくんといたいのにさぁ」
ぶつぶつと悪意を吐き捨てる泉さんを目の前にして、私は顔を真っ赤にし涙ぐみながら頭を下げた。