第10章 Happy birthday (朔間 凛月)
差し込む夕焼けに彼の黒髪がキラキラと輝いている。
その艶やかさに私は目を奪われていると突然彼の体が動き欠伸が聞こえてきた。
「ふぁあ、ふ……、へぇ、まだこんなとこうろついてんだ?暇なの?」
ごしごしと目元を撫でる彼はまるで猫だ。自由気ままで甘え上手な。
『~~~っ』
私は顔を赤らめさせ、隠し持っていた包み紙を彼に渡した。
「ん~……なに、これ?」
『あ、あの・・・その・・・お、お誕生日おめでとうございますっ』
上手く言葉が紡げず私は更に顔を赤らめ下を向いた。
返事がなくやっぱり迷惑だったかなと心配になり、そっと顔を上げると凛月くんはもぐもぐと口元を動かしながら次々と私が作ったクッキーを食べていてくれた。
『~~~っ!』
「ん~……まぁまぁかな。喉がかわいたなぁ。ねえ、ちょっとジュース買って来てくれない?俺、炭酸系がいいなぁ」
はい、とお金を渡す凛月くんを見て、私は慌てて彼からお金を受け取った。
嬉しい嬉しい!凛月くんが食べてくれた!
キラキラと目を輝かせていると凛月くんは小さく欠伸をしてクッキーが入っていた包みを丁寧に片づける。
「いいんじゃない?美味しかった」
『~~~っ!!あ、有難うっ!ジュース買って来るね!』
顔を真っ赤にさせながら私は微笑んだ。
駆け足で販売機に向かう為に後ろを振り向くと「ふぁあ…」とまた彼の眠たげな欠伸が聞こえてきた。
「………有難ね。アリス」