第11章 自分勝手な王様 (月永レオ)
「あぁあ、霊感(インスピレーション)が湧きあがるっ!挨拶なんて後にしてくれ!」
そう言うと彼はオレンジ色の髪を揺らしながらノートとペンをバックから取り出し何かを書きだした。
『あの・・・っ、レオさん・・・』
「あぁ~妄想が広がっていく・・・」
泉先輩から言付けを頼まれていたため私は焦った。
このままだと彼―――Knightsのリーダー、月永レオさんは妄想の世界に浸ってしまって話を聞いてくれないからだ。
どうしようと困っていると突然彼は「ん~・・・!」と唸りだす。
「妄想が広がるっ!」
目をキラキラと輝かせながら手の動きを止めないレオさんを見て私は小さくため息を吐いた。
しばらくすると書き終えたのか、レオさんは顔を上げ首を傾げる。
「あれ?アリス???どうしたんだ~?俺に何か用?って言っても、今忙しくてそれ所じゃないんだけど!」
ニコッと笑う笑顔が素敵な無邪気な少年。
一瞬ドキッと胸が鳴ったが私はそれを掻き消すように頭を横に振る。
『さ、さっきからいましたっ!あの、レオさん・・・話を』
「妄想が広がるっ!最高に楽しい~!」
またも私の話を聞いてくれずペンを動かしだしたレオさんを見て私は大きな声で彼の名を呼んだ。