第6章 壊れた者の話 (瀬名泉)
「なに?あんたまた泣いてんのぉ・・・?」
夢ノ咲学院アイドル科に入学してきた自称プロデューサの転校生、アリスは路地裏で膝を抱え込んで泣いていた。
ビクッと身体を揺らし、恐る恐るこちらを見てくる。
『・・・っ!』
俺の顔を見るとアリスは頬を引きつり嫌そうな表情を浮かべた。
「チョ~うざぁい」
むかつく~。何なのその態度。
腹が立った俺はアリスが抱え込んでいた皺くちゃになった紙を奪い取る。
するとアリスは慌てて俺の手から紙を取り返そうとするが、俺の方が身長が高いので紙に手が届かずぴょんぴょんと飛び跳ねていた。
「俺はねぇ・・・・・無視されるのが嫌なの」
『か、返してっ!』
飛び跳ねて俺の手から紙を取り返そうとするその姿はまるで兎だ。
俺は小さく微笑んで目元が真っ赤に染まったアリスの顔に顔を近づけた。
「見た目通りあんたって馬鹿だよねぇ?頑張って努力したって結果が出ないんだからさぁ?」
そう言うとアリスは飛ぶのを止め視線を下に落とす。
「どうせ今日も椚先生にダメ出しされたんでしょう?無駄なのにさぁ。こんなに歌詞書いて・・・」
苦笑しながらアリスから奪い取った歌詞を声に出して読み上げる。