第6章 壊れた者の話 (瀬名泉)
「・・・・・ここから始まる可能性という光で―――未来を奏でてゆく。流されがちな日々に・・・今日の星空のように僕らを・・・導くだろう」
ハッと鼻で笑い歌詞カードを地面に落とし踏みつける。
だけど、そんなことをしてもアリスは怒らずただ茫然とその様子を眺めていた。心ここにあらずとはまさにこのことだ。
何の反応もしないアリスに益々面白くなくなってきた。
「あんたほんと面白く無い人間だよねぇ?俺にこんなことされて何にもしないなんてさぁ」
壊れた玩具に用は無い。
俺は舌打ちした後にその場を去ろうと足を進めると背後から小さく泣き声が聞こえてきた。
小さく肩を揺らしながらひっそりと泣いている。この学院に来てから毎日だ。
「ほんと・・・イライラするなぁ」
あいつは自ら耳を塞ぎ逃げ込んだ。
俺は怒っているし、幻滅したし、もうあいつに何も期待していない。
それなのに・・・
再び俺はアリスの元に近づき、顎を手で掴み俺の顔に近づけた。
『な・・・っ!』
逃げて、泣いて、こんな情けない人間は生きてる意味がないよねぇ。もう、死んじゃった方がいいんじゃないの?
そう言ってやろうかと思ったけど目の前で涙を零し、嗚咽を漏らしているこの女が・・・・・。
「・・・・・っ」
俺は何も言えず、アリスの顎から手を離す。
言ってやろうと思っていたのにいざとなると言えなくなる。口端を歪める俺にアリスは掠れ切った声で俺の名を呼んだ。
『・・・泉・・くん・・・』
弱弱しく声を発するあいつを見て無性に泣きたくなった。
・・・・ふざけるな。誰がお前みたいな泣き虫の為にっ!
俺の青春はもう亀裂だらけになって純度を失って砕けてしまった。愛おしい輝きはもう過去にしかない。
「ねぇ、アリス」
名前を呼ぶと彼女は小さく肩を揺らし、こちらを見つめた。未だに輝きを失っていない瞳をこちらに向けて。
「 」
どれだけ罵倒しても輝きを失わず前へ歩く彼女が
嫌いだ。