第9章 シークレット
「んー?なんや浮気かー?」
ひっ!
満面の笑みで近づいてくる!
「ちちちちちち違います!言葉の綾というかボケっす!ボケ!」
「ひぃぃぃ!簓さんお疲れ様ですぅぅ!」
「龍太郎」
「はひぃぃぃ!」
「ありがとな」
「すみませんんんん!………え」
「これからものことよろしゅうな」
"簓のことよろしゅうな"
盧笙さんの言葉が不意に甦った。
「あ、はい、それは別に……」
「ほんなら、スタッフさんとは話着けたさかい。本番楽しみにしとるでー」
簓さんはくるりと向きを変え戻っていくと俺たちは顔を見合わせて思わず噴き出した。
寿命縮んだと龍太郎は笑いながら言った。
殺されはしないにしても釘を刺しに来たんだったりして。
収録は始まった。
この収録は俺達がトウキョウに進出する理由となった深夜レギュラーの番組。
トウキョウの若手芸人達とわいわいやっている。
定位置についてトークが広がる。
MCのアナウンサーがトークテーマを変えるたびに、芸人達はどこからともなく話題を引っ張りだしネタにしていった。
俺も負けじと前へ出た。
「そんなことあります!!?」
「ハハハハハハ!」
「ではトークテーマを変えたいと思います、こちら!」
アナウンサーがフリップを立てると
“白膠木簓とのキス報道についてねほりはほり聞いてみよう!”
と書かれていた。
「これ触れちゃう?」
このフリップが出ることは知っていた。
実は収録直前に話題にしても良いかプロデューサーさんから聞かれて、俺はOKを出した。
だって車の中で腹くくったから。
「聞きたい聞きたい!」
「あれなんだったの?まず状況説明しようぜ」
「さんに聞く前にですね、一緒に語っていただける方がいらっしゃってますのでお呼びしたいと思います」
「誰?」
「え!もしかして!?」
「マジで?」
「うそ、本人?」
スタジオを見渡したが見当たらない、簓さんが。
「ではどうぞ!」
「どうもー!ごめんやして遅れやしてお邪魔しますぅー!漫才師からピン芸人、無敵パワフル白膠木簓ですー!」
「うわぁ!簓さんだ!」
セットの後ろから出てきた簓さんは笑顔で挨拶をした。
衣装さんから借りたのか自分の衣装に似せるようにオレンジ色のスーツを着ている。
出る気満々じゃねーか!