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【ヒプマイ】先輩芸人の簓さん オオサカ編

第9章 シークレット


龍太郎が知ってたのかと問うようにこっちを見たが、俺はゆっくりと首を横に振った。

「出ちゃって良いんですか!」
「かまへんかまへん!よっ!相棒!」

その瞬間カメラも含め全ての視線が俺に集まった。
ステージに立って注目を浴びる時とは違う目線に動揺した。

「出るなんて聞いてないですよ……」
「がキョドってるぞ、知らなかったの?」
「聞いてない!」
「いいかげん騒動を説明してくださいよー」

ずっとネタだと思ってる芸人達は囃し立てた。

「アハハハ!いつまでって言われると一生?」
「いやいや、世間戸惑ってますって!」
「じゃあ世間様に許可取ったらええんかなー?」

許可って、俺らはなんなんだ。

「簓さーん、何処から何処までが冗談なのかわかんないっす」
「冗談ちゃうて!ホンマに付き合ってんの!」
「おい、どうなってんだよ!簓さん暴走してんぞ!」

簓さんもうここで言っちゃう気だ!
わかったよ簓さん男に二言は無い。

「はい、簓さんの話は事実です!」

俺とMC以外の全員そして簓さんらは大袈裟にずっこけた。

「簓さんあんたもコケるんかい!」
「つい癖で!」
「ここは新喜劇じゃないです!」
「簓さんがコケたら話変わってきますよ!」
「なに?どっち?ボケなの?」

俺は、てへへと頭を掻きながら立ち上がる簓さんの横に立って肩に腕を回した。
簓さんは一度俺を見ると同じように肩を抱き返した。

「本当に付き合ってます!これが証拠だ!」

そう言って簓さんと俺は勢いよく抱き合ってキスをした。
よくテレビで芸人同士がふざけあってキスをする映像が流れる時があるがそれに近いかもしれない。
でも俺達の中では本気のキスだった。

「俺達BL芸人でーす!良いエール待ってるでぇーー!!」

アナウンサーは開いた口が塞がないといった様子で、番組スタッフはゲラゲラ笑い、芸人はギャーギャー騒いだ。
プロデューサーなんかスタジオの端で両手を挙げて丸を作っている。

BLと良いエールの親父ギャグにどれだけの人が気づいたのだろうか。
この状況で俺はしょうもない親父ギャグを冷静に感心してしまった。
簓さんが登場してたった20分そこらで俺達は薄情した。

そしてこれは地上波の深夜で放送されたのだった。
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