第8章 現れるはずのない助っ人
「先に謝っとくわ、すまん!」
簓さんは両手をパチンと合わせて謝ってきた。
「どうしたの?」
「偶然なんかやないんや撮られたの」
「え?」
「オオサカでずっと記者に張られてたんやけどいつも上手く撒けんくてトウキョウまで着いてきよったんやと思う、たぶんそいつが撮ったんやないかな」
「何で俺のマンションに先回りしてたんだろ」
「わからん、ワイらの関係気付いてたんかな。でもな俺がチューしよう言うたんわな」
「ちょちょちょちょ!」
簓さんを遮って碧棺さんの顔をちらりと見たが全く聞く気がない顔をしている。
「何か顔についてっかよ」
「い、いえ……」
バックミラー越しに碧棺さんに睨まれた。
「やからな、期待してのチューやってん」
「え?なに期待って」
「撮られへんかなーって」
「はぁぁ?」
「雑誌に載ったらもうあっという間やなぁって」
「何が!」
「やから!もうコソコソしたないねん!」
「そんな理由!?」
「そんな理由ってことあらへんやろ! 」
「コソコソも何も別に男同士で歩いたって可笑しくはないでしょ??」
「手繋げへんやんか!!」
「そこ!?」
「手を繋ぐって付き合ってるやつの醍醐味やん!」
「そ、そんなの俺だって……でも他にもやり方あったじゃん!二人で何か考えてさ」
「言ったら嫌がるやん……」
痛いところつかれた。
「あのよ、イチャコラすんなら他所でやれや」
「す、すみません」
「遊んでばっかの左馬刻にはわからへんねん 」
「あ?んだとコラ。運転さしといて何だその言い種は、降ろすぞ、いや降りろ今すぐ飛び降りろ」
「ぜっっっったい!降りひん!」
なんだそれは、簓さんなんかカッコワルイぞ。
「あの、碧棺さんは何で来てくれたんですか」
「こいつに呼び出されたんだよ、最初は舎弟に行かせようと思ったんだけどよ」
「しゃ、しゃてい?」
「こいつヤクザやねん」
へ、へぇ~……車を出してくれる優しいヤクザさんって存在するんだなぁ。
目を細めて俺は遠くの空を見上げた。
簓さん、そっち系の人と絡んで業界的に大丈夫なんですか。