• テキストサイズ

【ヒプマイ】先輩芸人の簓さん オオサカ編

第5章 和解 ※過激な描写あり


「顔見たないとか、帰ってくんなとか、嘘……やから」

しゅんとして弁解してくる簓さんが可愛らしい。

「別れるもや。疲れたっていうのはのこと考えすぎてどうにかなりそうで……」
「ありがとう、俺も別れたくない」
「その言葉だけで十分や」
「俺こそごめんなさい、早く言ってればケンカすることなかった。トウキョウ進出が羨ましいとか本心じゃないよ?」
「あーあれはちょっと当たってるわ。ええなぁって思ったよ、まぁ芸人の性や。やから余計にムキになってもうた」
「ごめん」
「なあ、ネタにしたくて付き合ってたってどういう意味なん?」
「え?」
「言うてたやんケンカしとき」
「ああ、あれは……」

簓さんが芸人仲間に誘われてネタになるかもという理由で、天谷奴零さんに会ったと言っていたのがずっと頭の片隅に残っていた。
簓さんの俺に対する愛情がどこまでなのか確認できていなかっただけに大きく膨らんだことだった。

「なんや!そんなことかいな!ずっと気にしとったん?」
「そんなことって!もしかして思っちゃったんだよ!好きだって言ったらあっさりOKしちゃうしさぁ、モヤっと、したんだよ……」
「不安にさせてたんやな、ごめんな」
「違うって分かったからもう大丈夫」

「……優しいところ」
「ん?」
「気い使いなところ、有言実行してるところ。最初はそこに惚れたんやのこと」
「言われると恥ずかしいな。ずっと気になってたんだ、どこが好きなんだろうって。それね、全部簓さんの受け売り。お笑いに対する情熱とか、ファンを大事にしてるところとかも。全部簓さんから学んできた」
「俺から学ぶことなんかあらへんわ!どんだけ勉強熱心やねんホンマ」
「ねぇ簓さん、俺さ……トウキョウ行くのやっぱ……」
「ダメや」
「簓さん……」
「そんなんダメや、行かへんなんて俺が許さへん!気い使いなところは長所やけど短所でもあるなー。龍太郎のことは考えたんか?喜んでたで?相方は大切にしーひんと」
「わかってる、わかってるよ」
「行くべきやし、俺を気にしとるんなら俺ごときで人生棒に振ったらあかん!」
「……うん、俺……トウキョウ行きたいっ」
「ははは、そうやそれや!もう顔に書いてんで、“今すぐトウキョウ行きたいー”て!」

簓さんに背中を押して欲しかった。
行ってこいって言ってほしかったんだ。
/ 54ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp