第4章 怒りの裏返し
「簓さんが本心じゃないのはわかってるんで、こっちを発つ前には連絡します」
「それがええ。もう簓の面倒みるのは今回限りにさしてくれ」
「すみません」
「ももやぞ、自分でわかっとると思うけど。簓の性格もうわかるやろ?」
「はい、返す言葉もこざいません」
「会えばの話ばっかや、耳にタコできたわ。一番のこと気にかけとるアイツの気持ちも考ええ」
「はい」
「ていうか俺はキューピットか。なんで俺が仲介せなあかんのやってここに来させたんは俺の意思やけど。そもそもやな、アイツが助けて欲しそうな目で言うてくるから──」
盧笙さんに説教をくらい心底反省した。
しかし、説教から簓さんへの愚痴と化してしまった盧笙さんが面白くて笑うのを堪えた。
怒られてるのに笑うのはさすがにと思って真剣な顔をして話を聞いたのだけど、
「ニヤニヤすんな真面目に話ししとるんや」
ニヤけてたようです。
盧笙さんも愚痴を言えたのかすっきりしたみたいでお酒を注文していた。
「どついたれ本舗でしたっけ?トウキョウでラップバトルするんですよね?」
「ああ、そうみたいやな」
「どうですか?状況は」
「今のところは大して進展してへんな」
「そうなんですか、これからなんですね」
「せやな、トウキョウ行ったら美味い店でも見つけといてくれ」
「じゃあトウキョウ来たときはまた一緒に飲みましょう、今度は俺が奢ります!」
「楽しみしとるで、その間にぎょうさん儲けなな」
「任せてください!」
それから小一時間飲んだ。
学校生活の話が結構面白くて盧笙さんが生徒に好かれているのが伝わってきた。
この前のスカウト詐欺にあった生徒さんは天谷奴零の力?により芸能事務所に入るのだとか。
彼は一体何者なんだろう?
盧笙さんはまだ完全に信用はしていないようだ。
「出よか、準備終わってへんのやろ?」
「そうですね、そろそろ」
会計を済ませて店を出ると駅まで一緒に歩いた。
「ご馳走さまでした」
「かまへん、祝いや」
「あれ?盧笙先生やーん!こんなとこで何してんのー?」
盧笙さんの生徒だろうか、手を振りながら女の子がこちらに駆け寄ってきた。