第4章 怒りの裏返し
真っ昼間だが指定された居酒屋に入ると盧笙さんがこっちに気付いて手を振った。
「お疲れ様です」
「貴重なオフを潰してすまんな」
「とんでもない、むしろ盧笙さんから誘われることなんて無かったんで嬉しいです!」
「よう言うわ」
盧笙さんは照れ臭そうだ。
注文したお酒とお通しが運ばれてきたので乾杯した。
ここは盧笙さんの奢りらしい。
お酒がすすむとお互いの仕事や近状を話した。
盧笙さんとはお笑いの話をあまり語ることは無かったからとても新鮮だった。
「トウキョウでは認知されてないんで不安です」
「簓も心配しとったぞ」
「え?」
「お前らこんな時に何ケンカしとんねん」
「簓さんから聞いたんですか?」
「聞くもなにもアイツがまた家に来たんや」
帰宅すると簓さんが既に上がり込んでいたそうで、盧笙さんはその日のことを語り始めた。
「お前また勝手に上がって…って寝とるし、次はなんなんや」
「………」
「シカトかいな、寝るんやったら自分家帰れ!……って何やねんその顔」
「盧笙……」
「どしたんや、何があってん……目真っ赤やん」
「盧笙ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「なんやなんや!わけわからんわ、説明せい!」
「うぅ……に……に顔も見とおないって言うてもおたぁぁぁぁぁぁぁぁああ」
「はぁ?ケンカか」
「帰ってくんなってゆうたぁぁぁううええええ」
「うるさ……落ち着けて」
盧笙さんは簓さんを落ち着かせて話を聞いてあげたという。
「簓さんが泣いた……」
「泣くか?普通」
「すみません、巻き込んじゃって」
「軽く説教しといたわ」
「説教……」
「おめでとうの一言も言えんのかってな」
「俺が早くから伝えてれば良かった話で」
「ガキみたいに泣きよってからに」
そんなに泣いたのか、ちょっと見てみたかった。