第4章 怒りの裏返し
「おお、何してのや、一人か?」
「うん、買い物にー……え?」
彼女と目があった。
「え、あの、芸人のさん…ですよね?」
「あ、はい、そうです」
「うっそ!何で先生とさんが一緒におるん!?」
「盧笙さんの後輩なんです」
「そうなんですか!ちょっと先生、はよ言ってえな!」
「言えて、好きかどうかなんてわからんだろ」
「サイン貰ってもいいですか!」
「大丈夫ですよ、書くものあれば」
生徒さんは嬉しそうにバッグからメモ帳を取り出した。
ウチの生徒がすまんと言いながら盧笙さんは眉を下げた。
基本こういうのは断らないことにしている。
簓さんがそうしているからというのもあるけど、俺がまだ客側だったときサイン貰ったり写真撮って貰ったり対応してくれた時すごく嬉しかったから。
「こんなんで良いですかね?どうぞ」
「ありがとうございます!写真とかもええですか?」
「いいですよ」
「わーい!盧笙先生撮って!」
「はいはい」
「はいは一回やでぇせーんせっ」
「はい、撮るで」
なんか先輩に写真撮ってもらうのもなんだかな。
「わー!ありがとうございます!友達に自慢しよー!」
「気はすんだか?」
「はい、ありがとうございました!そろそろ行きますね。先生もありがとー!また明日なー!」
「気いつけて帰るんやぞ」
生徒さんは礼儀正しくお辞儀をして去っていった。
「元気な子ですね」
「あの子なんや、例のスカウトの生徒」
「そうなんですか」
盧笙さんの表情はもう教師の顔になっていた。
「盧笙さんかっこいいっすね」
「な、なんや急に……俺はそっちちゃうぞ……」
「ち、違いますよ!普通に思っただけですって!」
困惑する盧笙さんに慌てて誤解を解いた。