第3章 盧笙さん家
「よう!」
「あ?」
「お、お帰りなさい」
「何で己らがおんねん!」
「相変わらずキレのあるツッコミやなぁ」
「ツッコミやない、自分らどうやって入ってん!」
笑いながら簓さんは鍵を見せつけた。
「合鍵!?いつの間に……油断も隙もあらへんやっちゃなぁ。も何してんねん」
「付き添いです、すみません」
「はぁ、で?何しに家に来たんや」
「お前副業とかやってるやろ」
「な、なんのことや」
「隠さんでもええ、誰にも言わへん。せやけどそのビジネスは十中八九詐欺や」
盧笙さんは何を言い出すのかと呆れた顔をしたが、簓さんは説得を始めた。
簓さんを信じるか詐欺師の社長を信じるか、どっちなのかと盧笙さんに問いただすも、お前のことは信用できんと言わんばかりに昔の簓さんのやらかし話を持ち出しては話を信じようとしない。
「ははは、その話は一旦横に置いといて」
「何が置いといてやねん、このドアホが」
久しぶりに二人が横に並んで話しているのを見て不思議な感覚とともに懐かしさが込み上げてきた。
二人の掛け合いを見ていたらワクワクしてくる。
「は何ニヤけとんねん」
「え、あ、すみません、面白くてつい」
「面白いってお前」
簓さんが咳払いをして話を切り替えた。
「今からする話が本題やねん」
「ホンマ何なんや」
「俺とまた一緒に組まへんか?」
「いきなり何言うてんのや」
簓さんがヒプノシスマイクを盧笙さんに見せると驚いていた。
ディビジョンラップバトルに参加して盧笙さんと組みたいこと、優勝賞金が入れば詐欺もやめられることを説明したが、盧笙さんは首を縦に振らない。
まだ詐欺だと思っていないようだ。
「お前とはもう組みたくないねん」
「ガーーーーン!」
「口で言うやつがおるか」
「なんでやなんでやなんでやなんでやなんでやなんでやなんでやなんでやなんでやなんでやぁぁ!!」
「ちょっ、簓さん」
「痛い痛い…揺すりすぎや。ってもうこんな時間やないか!今から会わないかん人がおんねん」
「こんな大事な話をほっぽって会いに行く奴……誰や?教えてくれるまで通さへんで!」
食い下がらない簓さんに盧笙さんは深いため息をついて話し始めた。
自分の生徒が芸能関係のスカウトにあい、それが本物か確かめてきてほしいと頼まれたらしい。
その男にこれから会いに行くそうだ。