第1章 別府太郎の話【完結】
「ってなわけでさ、とりあえずはお友達からって感じなんだけど。何で俺なんだろう」
ふぅとため息をつく別府。しかし差すような視線に顔を上げると殺意のこもった目がいくつも自分を見ている。
「何て、何て贅沢なんだお前は! 贅沢なのはその腹の肉だけにしろ!」
「最初は断ろうと思っただぁ!? 俺だったら二つ返事だ!」
「お前と俺のどこが違うんだよ!」
腹を掴まれ上下に揉まれながらも別府は困った顔をするだけ。
「罰ゲームかなと思ったけど、そんな雰囲気じゃなかったし」
「だったら、とりあえず先輩が別府のどこを好きになったのか直接聞けばいい話じゃないのか」
自分の恋愛には勇み足だが、客観的だからかあっさりと的確な意見を出す八軒。
「……それもそうだな」
八軒の言葉に男達の目が一斉に別府へと向かう。
「え?」
「よし別府、お前どこが良くて惚れられたのか先輩に聞いてこい」
「えぇ~」
有無を言わさない勢いで問い詰められて、仕方ないとため息をついた。
「……わかったよ。明日聞いてみる」
「明日? 約束してるのか」
「うん、部活前に先輩が自家製のラザニア作ってくれるんだって」
嬉しそうなのはラザニアが目的なのだろうが、ニコニコと笑う別府はここぞとばかりに暴力を食らうのだった。