第15章 夏祭り
それから暫くして夏祭り当日。
部活の顧問を受け持っていないは、生徒が夏休みに入ると同時に、生徒よりは少ないが長期休暇となった。
休みに入ってからは、剣道部の顧問をしている杏寿郎を毎朝見送り、昼間は瑠火にくっついて家事をし、夜は疲れて帰ってくる杏寿郎を癒す。
"身体で"癒すので、体力オバケの杏寿郎より、の方が日に日に疲れていっている気がするのは…気のせいだろう。
浴衣も完成し、小物も揃え、杏寿郎が帰るまでに着付けを済ます。
生まれ変わり、こうやってお出かけに浴衣を着るのは初めてだったが、飾り帯の結び方も体が覚えており、難なく結ぶ事が出来た。
姿見で後ろ姿を確認し、ほっとしたのも束の間、襖の開く気配を感じそちらへ向けば杏寿郎が帰ってきていた。
「おかえりなさい!
お出迎えもせずごめんなさい」
杏寿郎へ駆け寄り通勤鞄を受け取ろうと手を伸ばすも、鞄は杏寿郎の手からストン、と下へ。
伸ばしたの手はそのままグイっと引かれ、杏寿郎の胸に抱き込まれる。
「っ、はあー…」
「杏寿郎さん?
具合でも…」
大きな溜息をつく杏寿郎が心配になり顔を覗こうとするも、更に強く身動きが取れない程抱きしめられる。
「杏寿郎さんっ、くるし…」
「本当に君って人は…
どれだけ俺を魅了すれば気がすむんだ?
綺麗だ、」
身体を離し、の頬に手を添え告げる。
今日まで内緒にしていたの浴衣は、臙脂色の生地に白百合が描かれた上品かつ華やかな物だった。
髪型も浴衣に合わせアップにして緩やかに纏められている。
色白の肌に臙脂が映え、またその逆に、臙脂から覗く白い項が色気を放つ。
すぐにでもその項に吸い付き、自分の物だという印を散りばめたい気持ちだが、そんな事をしたらお祭り所ではなくなってしまうだろう。
理性を総動員し、耐える。
「ありがとうございます。
杏寿郎さんも早く着て?」
ストレートに綺麗だと言われ嬉し恥ずかし頬を染める。
そんな初々しい姿にすら欲情する。
全集中常中でその場をとにかくやり過ごし、杏寿郎も浴衣へ着替える。