第14章 逢瀬
「…まあそれだけ今のお前たちが幸せなんだろう」
伊黒からの思わぬ一言に今度はと杏寿郎が目を見開いて彼を見る。
4人共に前世ではこうして幸せに過ごせることは無かった。
昼間に一緒に食事したり出かけたりはしても、夜には命を賭して鬼狩りをする日々。
昨日会った人が今日はもう生きていないというのも日常茶飯事。
鬼の居ないこの時代。
伊黒の言葉の意味はとても深く、重く、心に染みた。
「フンっ、止まってないで早く食え」
トゲのある言葉に似合わず顔は微笑んでいる。
いつも口の悪い彼の中の優しさに触れ、杏寿郎と顔を見合わせ笑い合う。
ただ、感激したのは2人だけではなく
「小芭内さん…かっこいいわ…」
常に優しい伊黒にしか会わない蜜璃すら感激のあまりキュンキュンしていた。
♢
「この様子ならも大丈夫そうだな」
「うむ。伊黒と甘露寺のおかげだ!
感謝する!」
山積みになった皿の間から、談笑すると蜜璃の様子を見て安堵する。
あの夜以来、杏寿郎の前で落ち込む姿も見せなかったが、今日のデートで元気が出たのも間違いない。
また4人で出かけようと約束し、店を出た。