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橙思いて来世へ紡ぐ【鬼滅の刃】

第17章 過去


「御屋敷では2ヶ月程お世話になりました。

他にも大変な生活を送る隊士はいたと思います。

もしかしたら、その中でも一番危うかったのかもしれません」


あまね様の診断通り、その頃は毎日一睡もしない、食事もしない、感情もないといった状態だった事を思い出す。

体も痩せ細り、全然女の子らしくなかったな、と今になって思う。



「わたしを助けて頂いた事、御館様には本当に感謝しています。

あの時助けて頂かなければ、杏寿郎さんに出逢えなかったかもしれません…




そういえば杏寿郎さんとは過去の話はあまりしませんでしたね」


杏寿郎の様に先祖代々鬼殺隊の家柄でないものは、皆何かしら暗く重い過去を背負っている事が多い隊士達。

お互いそういう部分には触れない事が一種の作法であった。


「当時も気にならない事もなかったが、仕事柄その時その時のとの時間を大切にしていれば良いと思っていた!」


ニコッ、と太陽のような笑顔がに向けられる。

裏表無い、心の底からの笑顔。



ああ…この人は本当に素晴らしい御人。


とんっ、と顔から抱きつく様に杏寿郎に凭れ掛かる。


「杏寿郎さんのそういう所が大好きです」


「ん?特別な事は言ってないぞ?」


ナチュラルイケメン過ぎませんか?


「んもう、ズルい!

そういう所ですぅ!」


凭れていた体を起こし、杏寿郎の大腿の上に跨る。


「どれだけ好きにならせれば気が済むんですか?」


首に腕を回し、杏寿郎の唇を何度も食む。

杏寿郎の腕もの腰に回り、グッ、と距離が縮まる。

吐息と水音。


「あの時助けて貰えなければ、こうしてるのは違う女の人だったかもしれませんね…

そんなの…考えただけでも嫌…!

杏寿郎さんに触れられるのはわたしだけにしてくれますか?」


不安げに揺れる瞳で見つめてくるの頭を撫でる。


「可愛い事を言ってくれるな。

当たり前だ。

俺の全てはお前のものだ」


その言葉に安心したように頷き、再度唇を合わせる。


2人を濃密な空気が包み、漸く離した唇を杏寿郎の耳に近づける。


「…お布団連れてって?」


「承知した」


そのまま抱き上げ、月明かりに照らされた廊下を寝室へ向かって歩き出す。






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