第17章 過去
あまね様といえば、お会いするのは御館様の代理の時であって、杏寿郎としては立派なお内儀という印象しかなかった。
しかしとあまね様はなんと文通する間柄だったのだ。
流石に内容までは聞けなかったが、それを知った時は杏寿郎も驚いたものだ。
結果、ありがたく頂戴して2人で旅行に行けることになった。
♢
「前々から聞きたかったんだが、とあまね様はどういう関係なんだ?」
旅行の経緯を思い出し、疑問に思った事を尋ねる。
「あまね様?
うーん、恩人であり、姉であり、厚かましいですが友人でもあります」
「よもや!友人とは!」
「友人は厚かましすぎました。
両親がいなくなったわたしを、少しの間面倒見て頂いていたんです」
「それは初耳だ」
鬼殺隊士だった両親を亡くしたのはが14歳の頃。
育手ではなく両親の元で呼吸法を取得し、最終試験から帰ってきた直後に両親の訃報にあった。
悲しむ間もなく両親の葬儀、それが終われば任務に明け暮れ、生活に追われ。
心休まる時がなかった。
「笑う事も泣く事も出来なくなって、でも周りには迷惑かけちゃいけないから、毎日笑顔を貼り付けてました。
人前では笑顔、独りになれば無表情。
心折れそうと言うよりも、感情を無くしてしまった時、あまね様が迎えに来てくれたんです」