第93章 言葉がなくても
ようやく3週間か…。
カレンダーのバツ印は、やっと大半を埋めた。
でもまだ1週間もある…。
「ー!電話だぞー。」
リビングから呼びたてる父さんの声。
どうせ、学校の友達だろう。
子機を部屋に持ってきて、ゆっくり話すか…。
「もしもし?」
『おせー。』
「………。」
『………。』
「…か…、えで…?」
『おぉ。』
それからの会話は、正直あんまりよく覚えてない。
嬉しくて、嬉しくて会話なんてどうでもよかった。
ただ、楓の声が聞けたと言う事実が、嬉しかった。
この間の夢がウソのように、疑いが晴れた。
楓の声を聞くだけで安心できた。
電話を切った後も、楓の声が耳にしっかり残っている。
言葉がなくても
ぬくもりを感じる。