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オレンジ色の恋模様<流川楓>

第86章 ちくりと棘が刺さった指先




それはまだ、私がプレーヤーだった時の話。
もともと色素は薄かったけど、髪の毛の色は茶色。
オレンジなんかじゃなかった。


一度だけ男バスの練習試合を見に行った。
うちの男バスもそこそこ強いけど、それ以上の人がいる。
だから、監督命令で見に行ったんだ。


「富ヶ丘中は流川のワンマンチームですねぇ…。」
「そうですね。彼さえ押さえれば崩すのは簡単だ。」


たかだか練習試合だってのに、どこぞの記者がいた。


確かにワンマンチームだし、ルカワと言う人を抑えれば崩せる。
でも、抑えられないからワンマンチームなんだ。


「和光中はいいチームなんだけどねぇ…。」
「彼のようにスターになれる選手がいないね。」
「あぁ、部活動レベルの上手さだ。」


その時の私には、記者たちの会話なんて耳に入ってなかった。


ルカワと言う人のプレイに魅入っていたから。


なんて見事なボールさばき。
なんて綺麗なシュートフォーム。


すごい。


そして何より、なんて生き生きとしているんだろう。
彼はきっと、バスケをするために生まれてきたんだ。





「!!危ないっ!!」


チームメイトの声で、はっと我に返る。



バシィッ!!



胸元には、寸前でキャッチしたボール。
自分がプレーヤーでよかった。


キャッチしたボールを審判に返して、コートを見るとルカワと目があった。
切れ長でキレイだけど、鋭い視線。


そんなルカワは小さく頭を下げた。


あぁ、ルカワのボールだったんだ…。





大丈夫と心配するチームメイトの声が、遠くで聞こえる。
指が、掌が刺すように痛い。
ジンジンとした熱が棘のように突き刺さる。


まぶしすぎて、クラクラする。



































ちくりと棘が刺さった指先
この瞬間、私は彼に恋をした。




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