第80章 希望的観測と悲観的論調
「おい。」
「あー、かえでー?」
「おめー、どうした?」
最近、こいつに対する嫌がらせも少し収まってきた。
そう思っていた矢先に、こいつはボーっとすることが多くなった。
「……この後、付き合え。」
「まだバスケするのー?好きだねぇ。」
「ちげぇ。」
自転車の後ろに乗せて、暗くなった道を走る。
「おー。冬の海も、これまた乙だねぇ。でも寒い。」
なんだ、この違和感がある元気さは。
ようやく掴んできたこいつの性格。
こいつは何か思い悩む事があると、わざと明るくふるまう。
そう言うヤツだ。
「で?なにがあった?また、嫌がらせでもされたか?」
明るい月を見上げて、ぽつりと話し始めた。
「洋平さー、あ、洋平って知ってる?」
「知ってる。」
あいつの話題か…。
「洋平、私のこと好きなんだって。」
「………それで?」
「私、全然気づかなくてさ…。今考えると、無神経な事とか傷つける事とかたくさん言っちゃったかなぁって…。」
それが、あいつの選んだ道だろ。
「それから、変に意識しちゃって、洋平の顔見れなくてさぁ…。」
「………あいつが、なんで自分の気持ちを言わなかったんだと思う?」
「…私が楓を好きだから?」
「それもある。でも少しちげー。」
「?」
見当がつかないという顔。
本当に、男心ってもんが分かってねぇ。