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オレンジ色の恋模様<流川楓>

第75章 沈黙にひそむ言葉の数々




あぁ、やっぱり来たか…。


“死ね”


“ブス”


この単語しか知らないのかと言うくらい、この2語で教科書はいっぱいだ。
教室に来るまでも、上履きがずぶ濡れだった。


まったく、ずいぶんと幼稚な事をしてくれる。
内容は幼稚なのに、楓に分からないようにやるところが狡猾だ。





「はぁ…。」


教室にいれば、女子たちのクスクスと笑う陰湿な声が耳に触る。
だから最近は屋上でさぼることが多い。


「不景気な顔してんなぁ。」
「よーへぇ。」
「その顔は流川のファンがらみと見た。」
「……せーかいですよぉー。」


そーかと言って私の横に腰を下ろす。


「てめぇ、人が禁煙中だってのに…。」
「おまえも吸うか?」
「話聞いてるか?」
「で、おまえ、上履きは?」
「……雨に降られた。」


洋平の肺から出てきた煙が、ドーナツの形になって私の目の前を漂う。


ただそこにいるだけなのに、こいつの空気は安心する。
兄弟のような、家族のようなそんな空気。







































沈黙にひそむ言葉の数々
楓の事は好きだけど、洋平はきっと特別だ。




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