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オレンジ色の恋模様<流川楓>

第37章 上を向いて泣こう




決勝リーグ最終試合。
このゲームの勝者が全国に行ける。


手に汗握る、息ができないくらいの激闘だった。
こんな試合、こんな流川、私は知らない。


取られたら取り返す。
目まぐるしく変わる、ディフェンスとオフェンス。


最後の1秒まで攻めて、文句なしの全国出場をもぎ取ったのは湘北だった。


みんなが大いに喜ぶ中、私だけがその喜びを実感できないでいた。
そこだけ時間が止まったようだった。





ちがう。




私だけじゃない。





ゴリの時間も止まっていた。
あのゴリが涙を見せるから。


あー、くそ。


私まで泣きそうじゃないか。





「なに泣いてんだ、おめーは。」
「…泣いてねぇよ。」


泣きそうなのを指摘され、恥ずかしくなって背を向けた。
それでも、下を向く訳にはいかなかった。
下を向いたら、涙がこぼれそうだから。


ジャージのすそを握りしめて、涙を我慢する。


「隠してるつもりか、どあほう。」


汗ばんだ流川の手が髪の毛に触れた。
必死で我慢してた涙があふれた。


「…ふぇっ…。」


とめどなくあふれる涙に触れたのは、柔らかいタオルだった。


「整列してくる。泣きたいなら顔隠しとけ。」


きっと汗を拭いたであろうタオルは湿っていた。


こんな汗臭いタオルで顔なんか隠せるか。


涙をこぼしてしまう原因になった流川に悪態着いてみたが
不器用な彼の精一杯の優しさだと知っているから
言葉には出さず、心の中で文句を言ってやった。


























上を向いて泣こう
その汗臭さも、嫌ではないんだよ。




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