第35章 頬を包む暖かな手
「お疲れ様。」
「………。」
誰にも会いたくなくて、一人になった。
それなのに、こいつは空気を読まない。
「来るんじゃねー。」
「どうして?」
「………。」
「流川が、今一人になったら責めるでしょう?」
「………。」
「勝てなかったのは、流川の所為じゃないよ。」
じゃぁ、誰の所為だって言うんだ。
オレがあそこでへばってなきゃ、勝てたかもしれないんだ。
「全力を出し切った。」
試合は、勝たなきゃ意味がない。
“良い試合でした”なんて、記録には残らない。
「それでいいじゃないか。今は頑張った自分をほめてあげよう?」
頬を包む暖かな手
全てが許される。そんな錯覚に陥る。