第27章 いつもより一歩分だけ近付く
部活終了後。
いつも通り流川との1on1を楽しんでいた。
ずいぶんな時間をやっていたのか、ギャラリーはすでにいなく、広い体育館には2人だけになっていた。
「そろそろ帰るか。」
「おぉ。」
着替えてから、体育館の鍵を閉めて校門のところで別れを告げる。
いつも通りだった。
でも、今日は違う。
「じゃぁな、流川。」
「待て。」
「あ?」
「今日は送ってく。」
「はぁ?反対方向だろ?疲れてんだから早く帰れ。」
可愛くない。
もし自分が男だったら、絶対彼女にしたくない。
「…いつもより遅いから送ってく。おめーも一応女だ。」
「一応ってなんだよ。」
「いいから早く乗れ。」
自転車にまたがり後ろの荷台をアゴで指した。
「………寝るなよ。」
「寝ねぇ。………たぶん。」
「はぁ~…。」
荷台にまたがり、深呼吸。
この深呼吸は居眠り運転へのあきれでも何でもなくて
ただ単に、広い流川の背中への緊張の現れだってこと。
そんなこと、誰に指摘されるまでもなく、自分が一番わかってる。
いつもより一歩分だけ近付く
あぁ、好きだなぁ…。