第25章 戸惑いは小さな足枷
普通に笑って、普通に話しかける。
それが難しい。
「流…川くん……。」
「晴子ー。そんな小さい声じゃ聞こえないんじゃない?」
そんなのわかってるわよぅ。
でもだって、声なんか掛けられないわ。
彼に普通に接する女の子なんて、きっと、あの子以外いないわ。
「おい、流川。」
良く通るきれいな声。
あ、流川くん、嬉しそう。
この声だけよね。
流川くんが嬉しそうに反応するの…。
「あーあ。晴子がうだうだしてるからよ。」
「そうね…。」
私には絶対できないわ。
私がどんなに大きい声で呼んでも、嬉しそうな顔は見られないわ。
ねぇ、流川くん。
私、あなたのその顔が大好きよ。
でも少し悔しいの。
私だって、だれにも負けないくらいあなたが好きなのに。
声が届かないなんて悔しいわ。
でも、あなたのその顔を見たいって気持ちもあるの。
ホントに自分でもどうしていいかわからないのよ。
戸惑いは小さな足枷
届いてほしい声。でも私の声じゃダメなのよね…?