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家政婦さんっ!

第1章 第一章その一 燃えてるね。


決して裕福じゃなかったけど、普通に生きてきた。
学校を経営している伯父さんの支援で何とかやってこれたし、お兄ちゃんと生活しはじめてからも苦痛だと思ったことはない。
普通に学校に行って、普通に帰って、普通に家事をして、普通に寝る。
あたしは特に可愛くはないけれど、ブスかって言ったらそうでもないと思う。
頭はよろしくないけれど、体育と数学は5で。彼氏がいた時期もあったし、(長くは持たなかったけど)、それなりに友達もいた。
そう、なにもおかしいことはなかった。
でも目の前で起きている現実は普通じゃなかった。
火事の原因はお隣に住む人のたばこの火の不始末だったらしい。
三年前からお兄ちゃんと二人で住んでいたアパートは全焼。
服も、教科書も、すっごい使い心地の良かった枕も、全部なくなってしまった。
あたしの手には通帳(残高…うん)とブー(大事な人形)と野菜のアスパラガスだけ。
寝てたし、パジャマ。慌ててたし、左右違うスリッパ。
隣であたしと同じようにぼーっと立っているのはお兄ちゃん。それなりにいい大学に通っている。
お兄ちゃんはまだいい、クラスの飲み会からさっき駆けつけてきたから、マシな格好をしている。
「それ、非常食??」
「わかんない、でも手にフィットして」
「そっか大事にしなよ」
「うん、大切に育てる」
相変わらず目の前に広がる光景は赤い。
時々その赤が揺れて。お兄ちゃんの身体も揺れている。
「お酒、まだ抜けないの?」
「ん~ちょっと寝ていい?」
「…今?」
「くー…」
寝ました。ガチで寝ました。
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