第2章 第一章その二 カセーフ。
あたしたちが連れてこられたのは、応接室だった。
壁に掛けてある鹿やら猪やらの剝製を一つずつ眺める。
「はい、お冷えになったでしょう」
「あ、ありがとうございます」
使用人さんから出されたホットミルクを口に含んだ。
お兄ちゃんも喉が渇いていたのか、ちゃんと起きてミルクを口にする。
「司、あやめ、これからどうするんだ?伯父さん家に住ましてあげられればな…」
それは絶対無理なことで。
隆志さんの奥さんは、あたしのことが嫌いみたいだ。
汚いものは、イラナイらしい。
「俺は大丈夫だよ。バイトもしてるし。でもあやめは、」
そう、全部燃えちゃった…
ただの高校生のあたしには、行く当てもない。
もちろん完全に奥さんの尻に敷かれている隆志さんには、かくまってもらえないから。
今頃制服も教科書も灰になっているだろう。
学校に行けと言われても、定期券も燃えて行く手段さえない。
……あれ、そろそろ焦ってきたぞ。
この歳でホームレスを決め込む?
いや流石にそれは遠慮したい。