第18章 なんとかリウム【万里】 甘夢
ズルズルと身体を引きずって、ドアから這い出させる。正直次襲われたらいづみを守れる気がしねぇ。弱気になってる場合じゃねぇけど。
そして、また違う2人がフラフラと立ち上がってくる。
「ちっ……ゾンビかよ」
いづみを完全にドアから出させると俺は体育倉庫のドアを再び閉めた。外から力なくドンドンっといづみが叩く音がする。
「1人の女に寄ってたかって……」
このドアは死ぬ気で守る。
俺も何でこんなに必死になってんのか分かんねぇけど。体の関係が良かったから?いじめられてたという同情から?俺と似ていたから?
じゃあ……何で楽しかったんだ?
また男達が俺に向かって殴りかかってくる。俺も守りながらも蹴り返しては殴り返す。そして、何発も喰らっていく。
「はっ……手間掛けさせたやがって。こいつをやればそのドアの向こうにはお姉さんはいんだろ」
「あれだけフラフラだったしな」
あぁ……、いづみはオッサン達と会えたかな……、何だかドアの向こうが騒がしいような気もする……。でももうコイツらの声すらも遠く聞こえてきた。
"で、結局どうなの?お前の気持ち的に"
何でここで至さんの言葉が出んだよ……。俺の気持ち的に?あぁ……そっか、何で俺が楽しそうにしてたのか、こんなにもいづみを守る為に必死になってんのか分かった……俺いづみのことが……。
「ぐぁあ」
「て、てめぇ何もんだ」
窓ガラスから大男がスタスタと歩いてくる。
そして男達にパンチをクリーンヒットさせていく。
「おいおい、これは穏やかじゃねーな。立てるか?万里」
その声はよく聞いた声だった。
「臣、か……」
「ずいぶんボロボロだな(笑)とりあえず安心しろ、警察も呼んだし、左京さんも来てる、何よりもあの女の子も無事だしな」
「そりゃ……良かった……」
そして俺は意識が遠のいた。
遠くで臣が俺の名前を叫んでいた。