第18章 なんとかリウム【万里】 甘夢
「いづみ!!」
「万里……」
「大丈夫か!」
「うん……ありがとう」
「いつもの強気な発言はどこいったんだよ」
「この状況でそれ言う……?」
1人で立っているのもやっとのいづみを抱えて出口へ向かう。俺は完全にのびてる奴らのことを忘れていた。のびてた奴の1人が俺の後頭部にパンチを入れる。
「いっ……くそっ。いづみ、スマホでオッサンと臣って奴にLIMEしろ!!」
後頭部に強打が入った為か視界が揺らいでいた。そして口の中を少し切ったのか口から鉄の味がした。あろうことかのびてたはずだった奴は半分ほどは起き上がっていた。
「はぁぁあああ!!!」
「さっきは良くもやってくれたな!!!」
「全部、返り討ちにしてやるよ!!!」
俺は拳を振り上げるも中々当たらなかった。
そして更に2発程腹にパンチを喰らった。
「がはっ……」
くそ……くそ……こんなところで負ける訳にはいかねぇんだよ。女とは違って、男の殴り合いや喧嘩もめんどくせぇな。
「ぎゃははは、ここまでかよ!!」
男は俺の髪の毛を引っ張って来て無理矢理顔を上げさせる。そして顔面にもう一度パンチを喰らった。更にボヤけて来る。
「すみません!!臣さんですか!?あの、た、助けて下さい!!万里が!万里が!」
いづみの電話の声すらも少し遠く聞こえる。ここまで……か。いや、いづみにまた男が近づいてる。俺は渾身の拳を男の顎下から上まで突き上げた。そいつは今度こそマットの上にのびていた。
「何電話何かしてんだよ!」
いづみが電話してる横で男が近づき、いづみの胸ぐらを掴みあげる。
「いった……オッサンさん!助けて下さい!万里から血が!」
オッサンさんって……こんな時に笑わせんじゃねぇよ。馬鹿だろ、いづみ。
俺はニッと笑うと男に向かって蹴りを入れる。
「ぐはっ」
「さっきから汚ぇ手でいづみのことを触んじゃねぇ!!」
くそ……やっぱり視界がぐるぐる回る。
お互いに大声出したから余計に立っているのがやっとだった。もう俺もいづみを支えられる元気はねぇ。
「いづみ、今のうちに外でろ」
「でも……万里血が……」