第12章 眠れない、午前何時【綴】 甘夢
「え?」
「いや、暑いかもですけど適度な気分転換図ったら寝られるかもしれないじゃないですか」
「でも、左京さんから夜は絶対出歩くなと釘を刺されてるから」
「それは監督1人で行く場合でしょ」
「そうなの?」
「朝日、見える場所知ってんすよ」
「行ってみたい!」
「じゃあ、行きますか」
私と綴は玄関に向かって歩き、音を立てずに玄関を出る。もう少ししたら、丞や臣が起きてくる時間だ。玄関を出ると外は真っ暗闇だった。
「暗い……」
「夜中の3時半過ぎなんてそんなもんすよ」
「綴はこの時間外出るの?」
「前に新聞配達のバイトしてた時は良く行ってましたが、今は基本的には中庭だけっすかね」
「いいなぁ」
「そりゃ、夜中に女性がうろちょろしてたら危ないでしょ」
「うん……そうなんだけどさ、夜の風とか心地いいことない?後は危ないから出ちゃダメよって言われると出たくなるし、出たら出たで達成感みたいなの感じること」
「んー。ありますけど」
「でしょー。だから今私は左京さんの言いつけ破ってんぜ!って気持ち」
「俺、共犯者じゃないっすか」
「私1人じゃなきゃ良いって言ったの、綴でしょ。だけど、真夜中の空はこんなにも暗いのが続いてるって初めて知った」
川沿いまで2人で横並びになって笑いながら歩いていく。さっきから歩いてるけど一向に話は途切れない。
「窓から見る景色と実際外に出るのはこんなにも違うのね」
「気分転換が図れてるなら良かったっす」
スマホを見ると時刻は既に4時を回っていた。寮からは少し離れていた。
「ここっすよ」
「何だかさっきより明るい気がする」
「そうっすね、もうそろそろ日の入りの時間ですから」
「こんなに早いんだね」
と言ってる間に徐々に太陽が昇って来る。
川沿いの為か上がってくると光が反射して川がキラキラ光っていた。
「わぁあ!綴!!綺麗!」
「そうっすね、俺も今までで見た中で1番綺麗かも」
「ねー!綺麗!」
私は無意識に綴の腕を掴み綴をゆさゆさと揺らし、ぴょんぴょんと跳ね身体全体で嬉しさを表現していた。
ずっと見ていたい。めっちゃ綺麗。
ふと綴が朝日よりも私のことを見てるのに気づいた。
「監督……」
「ん?」
「そんな監督見てると、俺も連れてきてよかったって思います」
「うん!本当に!ありがとう!」
