第12章 眠れない、午前何時【綴】 甘夢
んー。眠れないなぁ。
暑ぐるしいし、ベタベタするし、こんな暑い夏は嫌だなぁ。もっと涼しくならないかなぁ。
「ふぁ……もうこんな時間……」
時計は既に3時半を差していた。
明日のこと考えたら寝なきゃなんだけど、暑くて寝付けない。リビングまでとりあえず飲み物飲みに行こうかな。
ベッドから身体を起こして、リビングへと向かう。日中は騒がしいことがほとんどだけれど、当たり前だけどこの時間はシーンと静まり返っていた。冷蔵庫を開いて、冷たい飲み物を取る。
「ぁ、ホワイトウォーターある」
ホワイトウォーターは大好物で、冷蔵庫からとってコップに注ぐ。ゴクゴクと飲み干せば、やっぱりこの味だなと痛感する。希釈しなくて済むペットボトルタイプは楽だ。
ふぅとため息をついて辺りを見渡すもやっぱり静まり返っている。当たり前だけど。
ガチャとふいにドアが開く。
「……ぇ!?監督!!!??」
綴の反応も分かる。
電気も着けずに居たら誰も居ないと思うのが普通だろう。
「シーっ!」
綴は口に手を当ててゆっくりとドアを閉めた。
「何してんすか、こんな夜中に」
「良く私だって分かったね」
「そりゃ、そんな服を着てるのは監督だけでしょう」
「いやいや、椋くんとか幸くんが居るじゃない」
「幸、は分からないけど背格好で分かりますよ」
「そうかなぁ」
「んで、電気も付けないで何してんすか」
綴は飽きれたように、私に近づいて来る。
髪の毛をポリポリと掻きながら。
「眠れなかっただけよ」
「こんな時間までっすか?」
「うん。むしろ綴は何してたの?こんな時間まで」
「レポートの課題です。やっと終わりました。今回は夏組公演の前ってこともあって結構厳しかったっす」
ここではお兄ちゃんのように振る舞う綴でも、やっぱり学生なんだと、そしてこの劇団でも大切な存在だと知る。
「大変だったね、お疲れ様」
綴も冷蔵庫からホワイトウォーターを手に取りコップに注ぐ。それを一気飲みしてコップを流しに置く。
「寝ないんすか」
「言ったでしょ。眠れないって」
「明日に響きますよ」
「知ってます」
「……外、少し散歩しますか?」