第10章 他の奴らなんて知らない【万里】 甘裏
「んー……万里おろしてー」
「何言ってんすか、まだ飲むんすか」
「だって飲み会だよー?」
「いやいや、飲み会でこんなに酔ったことないでしょ」
「そんな酔ってないよー」
「どの口が言ってんすか……」
「飲むのー」
「飲まない」
「飲むー」
「飲まない」
そんな言い争いをしていると、社員の1人が口を開く。
「いづみ先輩、彼氏さんですか?」
「うんー」
と言っていづみは俺の頬にキスをする。
それを見て社員はぼーぜんとしてる奴も居れば、キャーっと叫んでいる奴もいた。そして至さんの顔をみれば明らかに不機嫌だった。
「とりあえず万里、先に車回しとく」
「あざっす」
至さんは先に居酒屋を出た。
「やー、万里、おろしてー」
暴れるいづみをトンっとおろすも、その足はふらふらと今にも転びそうだった。
「わわっ、ありがとう」
「行きますよ」
そう言っていづみの腰に手を回して自分の方へと引き寄せる。俺の顔をじっと見つめてくる。向こうでは、他の奴らが残念だったなとか狙ってたのにとかそんな声が聞こえてくる。
さっき殴った奴もまだいづみをみているようで、やっぱり殴っただけじゃ気がすまねぇ。なんならここに居る野郎全員殴りてぇ。
俺は見つめてくるいづみの顎を持ち、上を向かせてキスをする。それも触れるだけのキスじゃねぇ深いやつ。そして、野郎共にガン飛ばして見せつける。
今後いづみに近づく野郎は許さない。
再びくたっといづみは俺にもたれかかってくる。
「あぁ、もうめんどくさいんで大人しくしててください」
俺はまたいづみを横に抱きかかえて、お邪魔しましたと言って部屋を出る。居酒屋前に至さんの車がついていた。扉を開けて、いづみを乗せる。その隣に俺も乗る。
「俺、ああいうクズ無理だわ」
「俺もっすわ」
「とりあえず、いづみさんの家でいいっしょ」
「お願いします」
至さんは車を発進させる。
俺はいづみの家を案内する。
「何だ、MANKAI寮の近くじゃん」
「そうなんすよ」
「後で、さっきの画像万里に送っとくわ」