第10章 他の奴らなんて知らない【万里】 甘裏
俺たちは至さんの車に乗り、ビロード駅前に行く。ちょうど連携の駐車場もあり、至さんも車から降り、居酒屋へと入ってく。
店に入って、店員からの変な視線を横目に俺たちはいづみの姿を探す。
トイレに行く細い通路でいづみと明らかに鼻の下が伸びている男の姿を見掛ける。
いづみのワイシャツは少し乱れている。
男は意識がぼんやりないづみのワイシャツに手をかけ、口付けしようとする。
「いづみさん!」
万里は男を殴る。
そして男との間に割って入る。
「んー……万里ー?」
「いやいや、何してんすか!」
「万里も何、してんの」
俺はいづみのワイシャツを正す。
足元も支えてないと1人では立ってられないぐらいだった。
「君、分かってるよね。この写真、ばらまれたくなかったら、飲み会場所まで案内して」
黒く笑う至さんを見て俺は軽くひいた。
いつ撮ったし、あの写真。それ、いづみにキスする数秒前じゃねぇか。
ひいぃと叫び声を上げ、真っ青な顔をして男は廊下を歩いて道案内する。
「やっぱり万里1人でいかせなくて正解」
俺はいづみをお姫様抱っこして移動をする。
殴るかもしれないという俺のことをあの電話だけで想像してる至さん怖っ。
「俺、あの場所無くなったら困るから」
「課金出来なくなるからっすか」
「……万里は少し感謝しろし」
「あざっす」
そんなこと言いながら、ガラッと扉を開くと男7人、女が3人いた。女性は俺と至さんを見て黄色い叫び声が上がった。
「君たち、いづみさんの荷物どこかな」
至さんは女性にいづみの荷物を貰い、説明をする。そして先程の男に耳打ちをすると男はブンブンと首を振る。どうやら、いづみのお金は男が払ってくれるということになったらしい。それと引き換えに先程の写真を消す約束になったらしい。
……あれ、でも至さんの写真って、撮ったらすぐサーバーにアップロードされるようになってなかったっけ……ま、いっか。